カカオの実の中の豆は、パルプという白い粘り気のある厚い果肉に保護されて並んでいる。このパルプ、実はカカオ・リキュールの材料にもなっている。
チョコレートの加工作業の第一段階として、パルプは取り除かれる。しかし、このパルプはフルーティで、それぞれの樹ごとに異なる繊細な香りを持っている。蜂蜜のような風味で、かすかにバニラに似た味もするという。取り除く作業は、まず穴だらけの木箱に入れてバナナの葉で覆い、バクテリアの発酵でパルプを液状化して穴から流し落とすというものだ。
通常は5日から7日かかる作業で、チョコレートが完成したときの香りに大きく影響を与えるという。
この段階で出てくるパルプの液体を、カカオ・リキュールの材料にする場合もあるらしい。パルプの香りを保っていて、味はチョコレートよりも蜂蜜やバニラに似ている。パルプを原料としたカカオ・リキュールは比較的めずらしいということだが、変わったブランドが手に入ったら原材料がカカオ豆なのかパルプなのか、確かめてみたいものだ。
発酵によってカカオ豆の香りが最大限に香ばしくなるためには日数が必要なのだが、残念ながら最近では生産性を重視するあまり早目に終わらせてしまうことも多いようだ。