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[ コラム ] 1月-15-2010

 蜜酒も神話に出てくるぐらい古い酒である。現在でも飲まれている酒であるが、蜂蜜から出来ているせいか、ワインやビールほどメジャーに飲まれていない。

 メソポタミアや古代エジプトには既に養蜂が普及していたという。ヨーロッパの岩絵にも描かれているようだ。中国では7世紀には蜜酒があったとされ、エチオピアやケニアにも登場している。

 中世でも蜂蜜は簡単に手に入ったようで、貯蔵がきくので家庭でも蜜酒は普通に造られていたようだ。蜂蜜を薄めただけでは酵母にとっては栄養分が不足して発酵しにくいので、さまざまな果汁が混ぜられるようになった。

 蜂蜜にブドウ汁を加えたものをピィメント(Pyment)、リンゴ汁を加えたものをシスター(Cyster)、麦芽の諸味を加えたものをメテグリン(Metheglin)と呼ぶ。イングランドではミード(Mead)としてピィメントの一種を造っている。

 蜜酒が登場する話はけっこう多いようだ。特に有名なものとして北欧神話の中に次のような話がある。

 アスガストの神々とヴァニールという海の国の神々の間で戦争が起きた。長い戦いの末に仲直りの人質として海の国からニオルド親子、アスガルドからはヘニールが選ばれ、平和の印に一つの壺の中に唾をはき、その唾液でクワシール(知識という意味)という人間をつくった。クワシールは世界を旅して人々に知恵を授けていたが、腹黒い小人の兄弟に殺され、その血を二つの大壺と一つの鍋に入れ、蜂蜜を混ぜて蜜酒をつくった。この蜜酒は不思議な力を持っていて、飲むと詩人になって美しい歌がつくれるようになるという話である。

 また、天上のワルハラという大広間の上に覆いかぶさったイグドラシル(トリネコ)の梢にヘイドルンという一頭の牝山羊がいて、その大きな乳房から無限に蜜酒をほとばらせ、主神オーディンがご馳走と蜜酒で宴会をするという場面もある。

 蜂蜜に関しては、古代エジプトの物語が話のネタになるだろう。蜂蜜の起源の話だ。

 昔、ある時にラー神が涙を流した。すると、その落ちた一滴の涙が一匹の蜂に変わった。蜂はすぐに巣を作り、忙しく花の間を飛び回って蜜を集めた。こうしてエジプト人は蜂蜜を知ったという。

 蜜酒もワインやビールと同様に、人間の歴史とともに歩んできた酒である。しかし、今では蜜酒ベースのカクテルぐらいでしか、飲む機会がないようだ。そんな時、こうした神話を添えてあげたいものだ。