照葉樹林文化圏というくくりがあるらしい。中国南部を含め東南アジアから日本にかけての広範な森林地帯を示し、この圏内では独特な農耕文化とともに酒の文化も伝承されている。
その黴(カビ)酒を粒酒として名付けている人達もいる。粒酒は、壷酒ともいえる。特徴は、固体発酵であること、ストロー(吸酒管と呼ぶ人もいる)を使って飲むところにある。大陸部の照葉樹林地帯には多くの種族が古くから住みつき、それぞれの粒酒を持っていたという。
代表的な粒酒としてはチベットのチャンがある。シコクビエの玄殻を水に漬けて熱湯で茹で、竹の筵(むしろ)の上に広げて放冷後、麹(こうじ)の粉を振りかけよく混ぜる。これを竹籠に入れ数日間置いた後に壷に移し、数日間発酵させると完成する。飲み方は、竹筒などの容器に移して熱湯を注ぎ、竹の管を差し込んで飲む。管の先端はスリット状になっているという。
カクテルにつくストローのイメージとはまったく異なるが、ストローを使って酒を飲む行為は意外と古いようだ。
紀元前2600年頃のメソポタニア・ウル王墓からの出土品にあるストローでビールを飲むシュメール人、紀元前1913年頃の出土品でパイプでビールを飲むバビロニア人などが知られている。
ストローで飲む風習はアフリカに伝播して、中国は日本ではほとんど見られないという。それでも中国の少数民族である羌(きょう)族では、客を迎える時に飲むザージウで壷に竹の管を差し込んで複数で吸酒する飲酒法があったようだ。
さて、いろいろな珍酒を取り上げてきたが、これで一区切りとさせていただきたい。次回からは、趣向を変えてチョコレートに関する話題を取り上げていく予定である。乞うご期待!