リキュールで使われる子実を紹介する後編である。今回を含めて5回にわたってリキュールに使う主なハーブ・スパイス類を紹介してきた。全部で43種類である。あれが抜けている、といった意見もあるだろう。ぜひ、そんな情報を提供してもらえば嬉しい限りだ。
★クミン
和名:クミン(漢名:馬芹 ばきん)
英語名:cumin、cummin
フランス語名:cumin
セリ科の一年草。エジプト原産。チリパウダーの素材に使われ、強い香りとホロ苦さを持っている。キャラウェイに似た香味を持っているためローマン・キャラウェイの別名がある。
★ディル
和名:イノンド(漢名:蒔羅子 じらし)
英語名:dill
フランス語名:aneth
セリ科の一年草。インド原産。葉と種子を用いるが、葉はすっきりした芳香を持ち、種子はやや刺激的な芳香と辛味を持っている。どちらもキャラウェイの香りに似ている。ちなみに聖書に出てくるアニスは、このディルのことではないかという説もある。
★フェンネル
和名:ウイキョウ(漢名:草冠に回+香 ういきょう)
英語名:fennel
フランス語名:fenouil
セリ科の多年草。南ヨーロッパの地中海沿岸原産。植物学上は果実である種子と呼ばれる部分を利用する。アニスによく似た甘い香りを持つが、キャラメル香も溶け込んでいる。リキュールの着香料としても利用されている。
★ジュニパー・ベリー
和名:トショウジツ(漢名:杜松実 としょうじつ)
英語名:juniperberry
フランス語名:genievre
ヒノキ科。アルプス地方南部原産。松ヤニに似た香りを持つ。ジンの香料として有名だが、ベルモットやリキュールにも使われ、煮込み料理のスパイスとしても利用される。
★ナツメグ
和名:ナツメグ(漢名:肉豆+莞の中に文(冠の寸が文のイメージ) にくずく)
英語名:nutmeg
フランス語名:muscade
ニクズク科の常緑高木。インドネシアのモルッカ諸島原産。種子の中の仁がナツメグで、それを取り巻く仮種子がメース(mace)。トロピカル調の甘い刺激香がどちらにも含まれている。ナツメグのほうが香りは強い。
★コショウ
和名:コショウ(漢名:胡椒 こしょう)
英語名:pepper
フランス語名:poivre
コショウ科の常緑灌木。南インド原産。爽快な香りと心地よい辛味を持つ。外皮のついたままのものがブラック・ペッパーで、外皮を除いたものがホワイト・ペッパー。ブラックの方が芳香性が強い。グリーン・ペッパーは未熟果を乾燥したもの。
★スターアニス
和名:ダイウイキョウ(漢名:大+草冠に回+香 だいういきょう、八角+草冠に回+香 はっかくういきょう)
英語名:star anise
フランス語名:anis etoile、badiane
モクレン科の常緑樹。中国西南部の広西省原産。アニス、フェンネルにも共通するアネトールという甘い芳香成分を含むが、スターアニスがもっとも強い。よくアニス、フェンネルの代替品として用いられる。八角の突起を持つことから「八角」の名がある。
★バニラ
和名:バニラ
英語名:vanilla
フランス語名:vanille
ラン科。中央アメリカ原産。マダガスカル、メキシコ、プエルト・リコが主な栽培地。バニリンという成分による甘美な芳香を持つ。つる性多年草のサヤ形の果実を未熟のうちに摘み、発酵、熟成させるとバニリンが生まれる。
注)フランス語特有の文字は一部省略して表記しています。