テキーラは、アガベ・アスール・テキラーナという品種でつくられる。この品種は、1902年に植物学者ウェーバーによって竜舌蘭の一品種として認定されたもので、メキシコ第2の都市、グァダラハラの近くのテキーラ町周辺の特産品種である。
一説によるとスペインの統治時代である18世紀半ば、メキシコの西北ハリスコ州、テキーラ村にほど近いアマチタン村の地で大きな山火事があったという。焼け跡には黒焦げになったマゲイ(竜舌蘭)がゴロゴロ転がっていた。辺り一面に漂う芳香を不思議に思った村人が、その一つを押しつぶしてみた。すると中から、チョコレート色の汁がにじみ出てきた。こういう時、人間は好奇心を抑えられない生き物だ。そっとなめてみる。すると上品な甘さがあった。マゲイの株の成分が山火事の熱で糖分に変わっていたのだ。蒸留技術を持つスペイン人はこの汁を絞って発酵させ、蒸留して、無色のスピリッツをつくった。
その後、蒸留工場は良質のマゲイを求めてテキーラ村に移り、ここがメスカルの本場となった。テキーラの近代的な蒸留が始まったのは1775年。メスカルが初めて国境を越えたのが1873年といわれている。1902年のウェーバーの認定以降、このアガベ・アスール・テキラーナでつくるメスカルは、テキーラ(Tequila)という名で売られることになった。