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[ コラム ] 10月-30-2009

 前回がソーマ酒だったので、同じインドの古酒であるスラー酒を取り上げたい。インドラがソーマ酒に悪酔いして、吐き出したものがスラー酒ともいわれるからだ。

 スラー(Sura)酒も解明されていなかった部分が多かったのだが、『酒造りの民族誌』の「古代インドの酒スラー」(永ノ尾信悟著)により明らかにされている。古代の酒が詳細に記述されている、大変珍しい文献である。

 その中で、紀元前1000年後半に成立したといわれる3つの文献「バウダーヤナ・シュラウタスートラ」「アーパスタバ・シュラウタスートラ」「カーティヤーヤナ・シュラウタスートラ」から引用して次のようにまとめてある。

 スラーは大麦芽、稲芽、豆芽などの発酵材にさらに玄米粥、その重湯そして炒り玄米あるいは大麦粥や炒り大麦を材料としたかなりドロドロした飲み物である(飲むときは多くのミルクを入れる)。

 それ以前の文献では、『東亜発酵化学論攷』(山崎百治著)の中で次のように解説されている。「ソーマ酒に次いで重要なものはスラー酒で、其製法は発芽野生稲に、牛乳凝固物をバター、ミルクに浸漬した大麦の粗粉と微炒した大麦とを加え、発酵させる」

 スラー酒はソーマ酒と同様に古代インドのヴェーダ儀礼に使われる供物であり、広く民衆にも飲まれたいたようだが、ヒンドゥー教の普及によって飲まれなくなったらしい。

 ちなみに古代インドには、メーダカ、プラサンナ、アーサヴァ、アリシタ、マイレーヤ、マドーなど、いろいろな酒があったらしい。古代の人も飲み比べていたのかと思うと楽しくなってくる。酒好きとっては、意外と幸せな世界だったのかもしれない。