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[ コラム ] 5月-20-2008

 グラスの中身と言ってもドリンクではなく、グラスそのものの話である。な〜んだ…なんて思った方、グラスはカクテルを引き立てる名脇役のひとつ。デザインだけでなく、材質にもこだわりを持っていなくてはならない。

 さて、無色透明なグラスは材質面から大きく3つに分類できるが、それぞれご存知だろうか。

 まずは10〜13世紀に登場した、ソーダ・ライム・グラス(ソーダ石灰グラス)
 珪砂、酸化ナトリウム(ソーダ灰)、酸化カルシウム(石灰石)でつくられる。誕生は歴史的に古いが、現在でもほとんどがこのタイプである。特徴としては、酸化するとグラスに青みがつく。当然、そうしたグラスに酒を注いだら本来の色は再現されない。

 次は17世紀に登場した、ボヘミアン・クリスタル・グラス
 名前の由来になっているチェコの西部・中央部にあるボヘミア地方で生まれた。珪砂、酸化カルシウム(石灰石)、酸化カリウムでつくられる。化学的な耐久性がソーダ・ライム・グラスよりもある。その分だけ色の変化も少ない。

 そして1673年に発明された、クリスタル・グラス(鉛クリスタル・グラス)
 イギリスで酸化鉛を加えて美しい輝くを放つ鉛クリスタル・グラスが発明されたのが、1673年である。最高純度の原料を使うため透明感が強く、酸化鉛(鉛丹:えんたん)を含むので重量感がある。酸化鉛を主成分に珪砂、カリが加わって生まれてくるグラスは大きな屈折率が特徴。つまりカットしたときの輝くが素晴らしくなるのである。ちなみに指ではじいたりすると澄んだ金属音がするが、耐熱性があるとか強度があるわけではない。
 クリスタル・グラスと呼ぶには基準がある。国際的には酸化鉛の含有率が24%以上のものをクリスタル・グラスと呼び、日本のメーカーもこの基準に沿ってつくっている。
 国産のクリスタル・グラスで、セミ・クリスタル・グラスと呼んでいるものをあるが、こちらは酸化鉛の含有率が8〜12%ぐらいのものになっている。




 余談になるが、鉛クリスタル・グラスの登場によってステム(脚)を細く優美にした食卓用のグラスも広まり始めた。さらに20世紀になるとアメリカでグラス工業が発達してサンドイッチ・グラスと呼ばれるプレス・グラスが発明された。これを境に、ローマン・グラス時代以来の吹きガラス技術と共存時代を迎えることになった。

 美しい輝きと洗練されたデザイン。グラスは見せるディスプレイのひとつでもある。一般のご家庭で口を伏せて収納してあるのをたまに目にするが、ぜひ、口を上にして置いてもらいたいものだ。