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[ コラム ] 9月-18-2009

 酒神といわれて、ほとんどの人が思い起こすのは「バッカス」ではないだろうか。ギリシャ神話に登場する有名な神の一人である。ところで、「バッカス」というのはローマ時代の呼び方なのだが、ギリシャの神としては何と呼ばれていたかご存じだろうか。

 答えは、ディオニュソス。酒の神とはいっても、実はワインの神である。

 父親は、大神ゼウス。母親は、ゼウスの妻ヘラではなく、テーバイという国の王女セメーレである。嫉妬深いヘラは策略をもって、セメーレにゼウスの本身を見ることを望ませて、焼き殺してしまう。その時にセメーレはバッカスを身ごもっていて、それを知ったゼウスが火の中から子供と助け出し、脇腹で臨月まで育ててニンフ達に預けたというのが誕生の物語である。

 いつの世も浮気を知った妻の怒りはすさまじいもので、バッカスの苦難は続く。ニンフに育てられたバッカスは成長して、葡萄の栽培方法と果汁の絞り方を考えでしたのだが、またしてもヘラがバッカスの気を狂わせて、追い出した。バッカスは国々をさすらい、インドの方まで行ったという。そして至る所で葡萄の栽培方法やワインの作り方を教えたといわれている。

 ギリシャに帰ったバッカスは女神レアに授けられた自分の信仰を広めようとした。葡萄の神とは、冬に枯れ、春に芽吹く神であり、死んでは甦る不死の生命を持つ神として古代世界の人達に崇められたようだ。しかし酒の神であるから、一方で自由解放の喜びを与え、他方で狂気と破壊の野蛮に陥る危なさもあった。結果的にはあまりに熱狂的なものだったので、時の為政者によって無秩序と狂乱をもたらすとして禁止されたという。

 酒場の話題としては、次のような若い頃のエピソードなども面白いのではないだろうか。

 悪い船乗りたちが彼を捕まえて売り払おうと企み、船柱に縛り付けたところ、その柱から葡萄の蔓がはびこり、葡萄の房が垂れさがり、かぐわしいワインの匂いが流れた。船乗りたちは驚き恐れ、海に飛び込んだところ、皆イルカになってしまった。

 ちなみに、バッカスは演劇の神でもある。また、クレタ島の遺跡によると、ワインの神の前は蜂蜜酒の神であったという。