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[ 千葉県支部 ] 7月-1-2009

遠壽院での一日修行

日時:平成21年10月4日 11時〜17時00分
場所:遠壽院
参加人数:7名

・座禅・写経・唱題行・水行(男性のみ)

遠壽院での一日修行


[一日修行に参加してのレポート&感想 会員 竹田秀太郎]

 少し動けば汗ばむほどの暖かい天候に恵まれた日曜日、私たちは市川市中山にある遠壽院を訪れた。
鬼子母神をご本尊とするここ遠壽院は日蓮宗の寺院で、大荒行堂としてもその名を全国に知られていて、その歴史は1592年から続き、実に400年以上もさかのぼる事が出来る。
 境内には大きな枝垂れ梅の古木や、樹齢400年を超える柘榴の木があり、とても静謐な場所だ。柘榴の木は鬼子母神の御神木なのだそうだ。訪れた時、ちょうど見事な柘榴が実っていた。一見朽ちている様な威容を見せる老木が、これほど立派な実りを見せるのは、神仏の力かと思わずにいられなかった。
 荒行というのは、毎年11月1日から翌2月10日までの100日間を水行と読経をして過ごす非常に過酷な修行だ。出家僧以外出来ることではないが、今日はご住職のはからいで、P.B.O.千葉県支部の為に修行体験をさせて頂くことになった。P.B.O.メンバー4名、ビジター3名が参加。私は昨年に続き2回目の参加である。

 午前11時からまずは止観行。いわゆる座禅・瞑想である。深く静かに呼吸をして、心の中に丸い円相を思い描く。雑念を消し、やがて無念無想へと到達する。…が、出来ない。息を深くしていると肩に力が入り、円相を描こうとすると目をかたく閉じてしまう。しだいに体がグラグラと揺れだしてしまうような感じである。10分ほど経った頃だろうか、バシッと肩を木の棒でたたかれると、不思議と次第に落ち着いてくる。およそ30分。無念無想には到底いたらないが、鳥のさえずり、虫の声、木の葉を揺らす風のざわめきがひときわ大きく感じられ、静かな時間を過ごすことが出来た。
 その後昼食。ご住職の奥様が自ら作っていただいた精進料理をいただく。これもまたこの修行の楽しみ。大変美味しく頂きました。
 午後1時からは写経。90分ほどで書ける短めのお経を用意して頂けた。墨を磨るところから今自分がしていることだけに集中する事の大切さをお話頂いたが、確かに余計な気持ちが入ると筆に乱れが出る。店の仕込中、氷を割っているときに集中していないと余計な筋目で氷が割れてしまう。あれに似ている。心の揺らぎが字に表れるので非常に分かりやすい。無念とは難しいものだ。
 休憩をはさんで次に唱題行。お経を唱える行である。フリガナも書かれた短めのお経を頂き、ご住職に合わせて唱える。徐々にテンポが速くなると、ついて行くのが難しい。…では、と日蓮宗のお題目『南無妙法蓮華経』を唱える。これならできる。
 「南無」とはインドの挨拶「ナマステ」でも使われているように、サンスクリット語で「あなたを敬う」、「尊敬する」という意味らしい。つまり妙法蓮華経というありがたいお経を信じて敬いますということだそうだ。普段の生活では出すことのない大きな声で、くりかえしこの言葉を唱えていると、確かにこのときは他に何も考えていなかった時間だったように思う。修行僧の方たちもこうして一種のトランス状態に入っていくのかと感じることが出来た。
 その後、日が傾き始めた午後4時ころ、残念?ながら男性のみで水行を行う。ここ荒行堂としてのいわばメインイベントだ。お経を唱えながら木桶に水を汲み、後頭部から身体に勢いよく水をかける。暖かい日だったとはいえ、そこは10月、さすがに水は冷たい。開き直った感覚で繰り返し水をかけていると、次第に清々しさを感じてくる。

 大荒行では毎日午前3時から夜11時まで、1日に7回この水行を行うそうだ。最も寒い冬の100日間である。水盤には薄氷の張っている日もあるという。その他の時間は読経三昧。睡眠時間は平均2時間。食事は白粥、味噌汁それに野菜が少し。しかも2合の米で10人分程の量だという。外界から閉ざされた100日間。想像を絶するまさに過酷である。聞けば中にはこの荒行を5回、6回と達成している方もいるらしい。おそらく理屈を超えた修行を達成する中で何か見えてくるものがあるのだろう。
 すべての体験が終わり、修了式。写経したものを奉納御祈祷して頂き、修了証書を頂戴する。このとき、江戸時代後期に孝明天皇がご参拝されたという、ご本尊の鬼子母尊神像を参拝させていただいた。
 途中、ご住職が放たれる“気”をどれだけ感じ取れるかといったことや、威厳を感じさせる見た目とは裏腹に、ウィットに富んだご住職のお話で修行体験は終始和やかな雰囲気で行われた。自分が今、していることへ集中することの大切さも改めて学ぶことが出来、非常に有意義な一日であったと思う。
 一杯のお酒をお客様のために集中してつくり、そのお客様に提供する。当たり前のことかもしれないが、これからもっともっと気を付けていかなければと感じる。

 厳粛な場所であるにもかかわらず、貴重な体験をさせて頂きました遠壽院 伝師 戸田様、奥様。お忙しい中、お世話をしていただきました石崎様に感謝を申し上げます。
 ありがとうございました。

合掌

 追筆  ご住職の奇抜な発案のオリジナルカクテル、ぜひ実現してみたいものです。

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